実店舗を経営する際と同様に、ネットショップ(ECサイト)でも商品を売るためには資格や許可が必要な場合があります。そうしたことは、しっかりと法律で定められているので、絶対に怠ってはいけない部分です。しかし、取り扱う商品によって該当する法律や必要な資格・許可はさまざまで複雑。この記事では、ネットショップで販売される代表的な商品と、それにかかわる法律、必要な資格・許可についてカンタンに説明します。
目次:
取り扱う商品によって必要な資格・許可は異なる!
資格・許可が必要な場合と、そうでない場合がある
開業届は出さなければならないのか?
おわりに
○取り扱う商品によって必要な資格・許可は異なる!
ネットショップをはじめるとき、取り扱う商品ごとに資格や許可を取らなければならない場合があります。
当然ですが、食品や医薬品・化粧品を販売する際には、適切な衛生管理方法や有害物質の有無といった知識など、購入者の人体に被害が出ないよう、より繊細な取り扱いが求められます。
また、意外かもしれませんが、中古品を販売する際にも許可が必要です。
以下の表は、[主な取扱商品]と[関連法律]、[必要な資格・許可]をまとめたものです。まず、ご一読ください。
主な取扱商品 | 関連法律 | 必要な資格・許可 |
(1)中古品 | 古物営業法 | 資格:なし 許可:古物商許可 |
(2)食品 | 食品衛生法 | 資格:食品衛生責任者 許可:食品衛生法に基づく営業許可 |
(3)健康食品 | ・食品衛生法 ・医薬品医療機器等法 ・薬機法 |
資格:食品衛生責任者 許可:医薬品医療機器等法に基づく許可 |
(4)酒類 | 酒税法 | 資格:なし 許可:通信販売酒類小売業免許 |
(5)医薬品 | 医薬品医療機器等法 | 資格: ・薬剤師 ・登録販売者 許可: ・薬局開設許可 ・医療品販売許可・特定販売届出 |
(6)化粧品 | ・医薬品医療機器等法
・薬機法 |
資格:なし
許可:
|
ひとまずみなさんに覚えていただきたいのは、「どんな商品を販売するにしても、まずは法律を確認して、必要な資格や許可がないかを確認する」ことです。わからないことがあれば、すぐに各都道府県の役所などに相談されることをオススメします。
この表に記載されていない商品であっても、一旦、確認はしましょう。
○資格・許可が必要な場合と、そうでない場合がある
先ほど、取り扱う商品ごとに資格や許可を取らなければならないと述べましたが、じつは例外も存在します。表内の(1)~(6)の取扱商品のなかでも、要・不要があるので確認していきましょう。
(1)中古品
許可が必要なのは以下の13品目と定められています。しかし、ほとんどの商品をカバーしているので、「中古品は大体許可が必要」と覚えておいた方が良いかもしれません。
- 美術品類
- 衣類
- 時計・宝飾品類
- 自動車
- 自動二輪車及び原動機付自転車
- 自転車類
- 写真機類
- 事務機器類
- 機械工具類
- 道具類
- 皮革・ゴム製品類
- 書籍
- 金券類
(2)食品
食品を販売する際、許可の要・不要を判断するひとつの基準は、「手作りか否か」です。自身で調理した料理や、生鮮食品などを取り扱う際には必ず許可を取るようにしましょう。
対して、農家直送の農作物やパッケージ済みの加工品であれば、許可は必要ないことが多いです。
(3)健康食品
サプリや健康食品は、基本的に食品と同じ扱いとなります。
ただし、取り扱う食品が医療品にも関わってくる場合は、食品衛生法だけでなく食品表示法や薬機法などさまざまな法律の規制を受ける可能性があります。
(4)酒類
酒類はアルコールの度数や加工方法によって資格や許可の要・不要が異なります。
アルコール度数が1度以上あれば管轄の税務署へ販売業免許の申請をおこなわなければなりません。じつはみりんなどにもアルコールが含まれているので、注意が必要です。
ただし、ブランデーケーキやウイスキーボンボンといった、アルコールを含む菓子類は申請が必要ないケースもあります。
(5)医薬品
医薬品は特に人体にダイレクトに影響を及ぼすため、さまざまな法律が絡んできます。
そもそも医薬品は薬局か薬店しか販売が許されていません。さらに、実店舗で保管されている商品に限られます。
医薬品販売へのハードルは非常に高いため、本格的に薬局を開く場合以外は手を出さない方が無難でしょう。
(6)化粧品
化粧品は、製品の販売形態によって資格・許可がいるかどうかが変わってきます。
国内の化粧品製造販売業者から製品を仕入れて、表示や包装を変えずにそのまま販売するなら、特に資格や許可は必要ありません。
ただし、 それ以外の認可されていないオリジナルの化粧品は例外です。手作り石鹸なども化粧品に分類されるため、そうした製品を販売する際には必ず許可を取るようにしましょう。
○開業届を出す必要はあるのか?
ここまで個別具体的な事例をあげてきましたが、そもそも開業届を出す必要があるのかという基本的な問題に立ち返ってみます。
結論から言うと、開業届は出さなくてもなんら罰則はありません。
しかし、開業届の有無によって確定申告の節税効果に差が生まれる可能性があります。ネットショップの売上利益は雑所得扱いとなり、本業なら年間38万円以上、副業なら年間20万円以上で確定申告が求められます。
その際、開業届を出していればより節税効果が大きくなる「青色申告」がおこなえるようになります。言い換えれば、開業届を出さなければ「青色申告」はできません。
開業届の手続きは非常にカンタンなので、本業、副業に関わらず出しておいて損はないでしょう。
関連記事:ネットショップで稼いだお金は確定申告を!確定申告が必要な人とやり方を解説
○おわりに
今回は、ネットショップ運営の際に必要な資格・許可ついて紹介しました。商品を販売するときには、多くのケースで資格や許可が必要となります。それらを無断で販売すると法律違反となってしまうため、「この商品は資格・許可が必要なのか」と自己判断をおこなうよりも、所轄の役所へ出向いてしっかりと確認を取ることをオススメします。
せっかく良いネットショップを展開していても、このような初歩的な部分で後手に回ると信用度の低下にも繋がりかねません。できる確認はすぐにおこなっておきましょう。
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